■ 第8回 ■ テキスト:リュース・イリガライ『ひとつではない女の性』(勁草書房) ■ 日 時:00年03月19日(日)午後2時 ■ 報 告 者:田中俊英 1.要旨 @女のセクシュアリティの現状および男根ロゴス中心主義批判(P23〜30) a.キーワード1(現状) 「女性性器=非性器or非男性性器」「ペニスor(男の)子ども羨望、女の欲望は子どもで代償される」「防衛的処女性or男のための肉体」「西欧のセクシュアリティ=男&男or男と母」「(男の)対象」「ギリシャ彫刻における女性性器の不在、(割れ目の)縫合」「『真理・ひとつ・同一・現前・固有名等々』⇔『性器なし・陰画・裏……いつわりの仮面劇』」 b.キーワード2(イリガライ独自の視点) 「メタファーとしての“ふたつの唇”(P24)」「男は視覚、女は触覚」「ギリシャ以前への夢想?(P26)」 Aイリガライの「女」……多様、複数、差異など(P30〜34) a.性感帯 b.自分から離れ→(他から)出発……差異の連続? c.定着・固着しない d.隣接しながらも違う e.言説装置(“内面”)の外にいる……しかし「自己の裡」にいる f.何ものでもなく、同時にすべて g.「直線性」「対象・目標」「唯一の快楽、言説」を爆破、挫折→「他の体制」へ h.否定されたセクシュアリティの名残り?……支配的イデオロギーの周辺にいることは確か i.「母性」では独自性を失う j.多数だが分散しない……自己の裡に他者がいるから k.「自己対他者」という問題設定の放棄 B制度変革の必要性。秩序転覆の否定(P35〜37) a.分析の必要性 b.女は「商品」 c.階級の複数性 d.秩序転覆は男根主義への回帰 2.問題点 @ファロス制vs「女性の身体」という構図 a.精神分析理論のなじみにくさ(エディプス・コンプレックス、「去勢」等) b.メタファーのわかりにくさ c.身体性を前面に出すことによる、「女性」の固定化。生物学的差異へ収斂。……役割分担の固定。異性愛を本質的なものとして裏づける(それ以外の性のあり方を周縁に追いやる)。「女」というだけで共闘できる。 d.「男対女」という2項対立の限界(3-A-a) A「女」の位置づけ a.「女」が意味するものの揺れ……抽象的「女」⇔西洋白人中流女性⇔イリガライ自身 b.抽象的一般的「女」⇔階級・人種・民族等、階層別⇔特異性・単独性・「この私」 Bユートピアか?……固定化された現実社会の価値観を揺さぶるのではなく、ユートピアを夢見ているだけではないのか?(秩序転覆の効果を否定するにもかかわらず) C「自体愛」って? 3.フェミニズム、ジェンダー/セクシュアリティ/セックス(生物学的性差)を考えるということ @どう語るか? a.事例の出し方(経験、伝聞、読み)。もっとも根拠になる事例が、時には言語化さえ難しい個人的経験だという語りの困難さ。 b.中立/透明の立場はない? 各自の「偏見」をどう見つめ、文章化、議論するのか(女の中にも規範や「偏見」はある)。 c.語りの場のジェンダー構成(ex.「ホモソーシャル」) A「変化」をどう捉えるか? a.「ジェンダー」をどう考えるか? ジェンダー/セクシュアリティ/セックスは三位一体か? ファロスと「ふたつの唇」は2項対立するのか? b.各自のポジションの多様・重層・散在化 ○コミュニケーション(恋人・家族・友人・社会)の中の「ジェンダー」 ○規範(恋愛・結婚・家族等)の中の「ジェンダー」 ○欲望と理論を揺れる「ジェンダー」 |